「ふくじんひしつ かけいせいしょう」の話
まずは下の図を見て下さい。これはふくじんでホルモンが作られるようすをぬいぐるみ工場に例えたものです。
いきなりホルモン(完成したぬいぐるみ)ができるのではなく、いくつもの段階をへて作りあげられます。
ホルモンというのは体のぐあいを「いい調子」にするために体がつくるものです。
ホルモンにはいろいろな種類があり、足らないと背が伸びなくなったり、勉強ができなくなったりと、いろいろと困ったことがおきます。
その中でも「ふくじんひしつ」で作られるホルモンは命にかかわる大切なものです。
ふくじんのホルモンの紹介 |
| アルドステロン;かわいいブタのコックさんは、体の中の塩の見張り番。塩がうすすぎると血圧が下がり、元気がなくなってしまいます。 |
| コルチゾール;かわいいイヌのおまわりさんは、体の元気の見張り番。お熱を出したり病気の時、体が「ストレス」に負けないようにはげましてくれます。 |
| テストステロン;かわいい男の子は、「おとなの男の人」になるための案内役。筋肉がたくましくなったり、おヒゲが生えてきたりします。 |
さて、これが順調にいっている工場です。毎日、毎日、いくつものホルモン(ぬいぐるみ)が作られては、運ばれていきます。
ところが、このしくみがちょっとモタモタしてしまい、うまくホルモンができない体質があります。それを大人の人は「ふくじん かけいせいしょう」とよんでいます。
「かけいせい(過形成)」というのは、大きくふくれあがっている状態です。がんばってもがんばっても上手にホルモンができないので、工場を大きくしたり、材料置き場に作りかけの「ぬいぐるみの素」があふれたりして、ふくじんが大きくなるのです。
ホルモンを作る道具の調子がよくないために、ふくじんのホルモンが足りなくなり、本当はいらないホルモンや作りかけの材料が増えるのがこの体質のとくちょうです。では、次に下の図を見て下さい。
おやおや、何だか大変なことになってます。
「ブタのコックさん」と「イヌのおまわりさん」がいなくなってしまい、かわりに顔のない「作りかけのイヌのおまわりさん」と「男の子」がたくさん増えてしまいました。
さあ、大変。このままでは体の塩かげんがメチャメチャになって、ストレスに負けてしまうかもしれません。それに放っておいたら、女の子でも筋肉ムキムキになっておヒゲが生えてくるかもしれません。
「ふくじんかけいせいしょう」はみつかるのが遅れると、赤ちゃんのうちに命を落としてしまうこともある、こわい病気です。昔は、よくこの病気で命を落とす赤ちゃんがいました。
でも安心して下さい。今の日本では「マススクリーニング」といって、生まれて1週間ほどした赤ちゃんは全員検査をして、この体質が隠れていないかを調べています。
さて、ではこの病気の治療はどうすればよいのでしょう?
そうですね、できあがった「ふくじんひしつホルモン」を体の中にとりこめばいいのです。のみ薬がありますので、きちんとこのお薬をのめば、お薬に含まれている「ブタのコックさん」と「イヌのおまわりさん」が、ちゃんと体を守ってくれます。
でも、お熱を出したり、下痢になったりと体にストレスがかかっている時は、いつもより多めに薬をのまないと「ストレスとたたかうイヌのおまわりさん」が負けてしまうかもしれません。だから、病気の時には特にお薬ののみ忘れがないように気をつけましょう。
のみ薬のブタのコックさんには「フロリネフ」、イヌのおまわりさんには「コートリル」とか「コートン」という名前がついています。お熱の時ののみ方については、みてもらっている病院の先生やお母さんからよく聞いて下さい。
このページを作った人; 岐阜大学 小児科 / たした ひであき |